③満足感とともに初ヒルクライムレース(20131006高梁ヒルクライム)
パレードランを終え、いよいよ、タイム計測区間スタート。
しかしその直前、あることに気づいてしまった。
あ、HRモニター付けるの忘れてるわ!
しかし、時すでに遅し。
せっかく落ち着いてスタート準備ができていたと思っていたのに、ここへきて忘れ物。まあ、四川ダムでもガーミンに頼らずに上った時の方が結果が良かった時もあったし、などと自分の中で前向きな言い訳を決め、スタートの号砲とともにペダルをこぎ出した。
計測スタートは20mほど先の緑のライン。とりあえず自分計測のタイムの正確性を期すためにピッタリそのライン上でスタートボタンを押すことに集中した。
そして、ライン通過。
「ピロリン」という聞きなれた音を発してガーミンが時を刻み始めた・・・。
一瞬、周りの雑音は消え、とても静かな空気の中を切り裂いて進んでいく感覚にとらわれた。このグループの先頭集団ははるか前方を行っている。斜度はまだきつくない。なので追いつこうと思えば追いつけたかもしれない。でも後半のスタミナを考え、そこでとどまった。決して遅いペースではないと思う。だんだんと足への負荷がはっきりと感じられるようになってきたから。軽快に加速していく数台のバイクに抜かれた。それでも我慢である。
やがて斜度が少し増してきた。それまで音を感じられなかったが、自分の呼吸音が感じられ始めた。まだ荒い呼吸ではない。規則正しく呼吸を刻んでいく。
すると、はじめのスタートダッシュを終え、速度を失ていく人が現れ始める。加速しながら抜いていった人も何人か含まれている。そんなバイクを何台か抜きながらも自分で決めたペースは維持し、淡々と上っていった。
しばらくすると、程よいペースで上り続けているバイクを見つけ、追いついた。維持していたペースよりは少し落ちることになるが、体力温存を優先して、その後ろにつかせてもらうことにした。後ろにつかれたのを気づいているのか気づいていないのかはわからないが、その人のペースはほぼ一定。しばらくそのペースでついていった。斜度的に無理してそこで速度を上げなくてもそれを挽回できるところはあると判断した。
その後ちょっとして、前を行く人と同じジャージを着た人が私のななめ後ろについてきた。どうも、その人のすぐ後ろに着こうとしている感じであった。しかも、ちょっと前に出たり下がったりとペースが安定しない。せっかくいいペースで走っていたのをその人に乱されたくないため、離脱することにした。
ちょうどその直前、4台ほどのトレインが結構な勢いで抜いて行ったところであった。その後の様子を見ると、傾斜が増したところで少しペースを落とした感じである。差はあまりついていない。離脱して、そのグループの後ろに着くことを決意し、加速した。たぶんその後を追って前の人もしばらくついてきていたが、しばらくするとその気配は消えた。
次の目的のトレインを決めて離脱した以上、追いつかなければ単なる体力の消耗に過ぎない。追いつくのにかなり足を使ったが、何とか必死で追いすがり、4台の後に着いた。途中、追い越し禁止区間で間に別の人をはさんだが、そこまで距離は離れなかったため、その後の平坦に近いところで追いついた。ここらあたりで、コースの半分くらいといったところだろうか。
追いついてからはしんどさ半分、速度感からの楽しみ半分といったところだろうか、そのギリギリのところを行き来しつつ、何とかくらいついて行った。自分単独での走行であればそこまでは出せないだろうという速度域。先頭の人は、別に後ろを振り切ろうとしているわけではないだろうが、時折後ろの状況を確認するためにトレインを右や左に振って、後方を確認していた。
残り5kmを切ったあたりで動きがあった。
私の直前の人が前の3人から離れてしまったのである。コース上で少し人が密集しているところがあり、そこでうまくかわせず速度を落とし、前の3人から離れてしまった感じである。その後ろについていた私も当然そのまま置いて行かれた。その後はその人の後につき続けた。その人をパスしてその前に追いつくには距離が離れすぎておりリスクが大きすぎた。
残り3kmあたりだろうか、斜度がきつくなったところで前走者が失速。明らかに息も上がっているので前に出ることにした。ここからは基本的に一人旅で行く決意をした。コースの終盤にかけては斜度は上がる。速度も落ちるため、人の後ろに着くメリットは少なくなるとふんだ。
その後斜度がいったん緩まり、しばし下り。その後は最後まで斜度がきつくなる一方である。下りを終え、上りに差し掛かった時、一台のバイクに抜かれた。さっき後ろに着かせてもらっていた人である。しばしの休憩後体力が復活したらしい。再び私もついて行くことにした。抜く気はない。というか抜ける気もしない。
そして斜度は少しずつきつくなっていく。
山間のカーブで前の人が「右から抜きます!」と合図を送りその前の人を抜いた。続いて私も追い抜きざま見てみると、それは店長だった。「あ、、、てんちょ、、、」それしか言葉にならなかった。店長も「あ、、、」とそれだけ。お互いに言葉も十分発せられないくらいに消耗しきっているらしい。少し笑えた。それに比べ「右から抜きます!」とはっきり注意喚起していた前走者。正直すごいな、と思わざるを得なかった。
その後残り距離、500m、300m、200mと減っていき、最後のスパート。前走者が「うぉー!」と声をだし、ダンシングに切り替えた。この方と私の勝負は明らかについていたので、それを追うこともしない。ただ、私もケイデンスを幾分上げる努力はして何とか差が広がらないようには努力をした。
そして、ゴール・・・。
忘れずライン上でラップを切る。「ピッ!」
上がる息・・・。
ゴール後趣きのある民家の連なる通りを抜けて行く間に呼吸を何とか整え、もう一上りしてゴール後の待機場所である吹屋小学校まで上がった。
計測スタートしてから、ここまで15kmちょい。
感覚的には早かった。
レース途中何度か、そこまでどれくらいの距離走ったんだろうか、と距離を見てみたが、いずれも、あ、こんなに走ったんだ、早いな、という印象をもってその数字を見た。残り500mからも、残りの数字が減っていくのが嬉しかった。他のメンバーは、残り表示、特に1kmを切ってからの表示はまだ、そんなにあるのか、という感じになっていやな感情をもって見た人も多かったらしい。私自身体力的には追い込め切れていなかったのかもしれない。まだ余裕が残っていたので、数字が減るうれしさの方が勝っていたのかも、とちょっと反省している。確かに前半部分は余裕がありすぎたかもしれない。
ゴール後は待機場所で休憩し、下山の時刻を迎えた。
当然下り基調となり楽しく下ることができた。途中、どうやら八の集団の発生で救急車が来ているのを目にした。その脇には難題化のロードバイクも。何匹かのハチが私の身体にもあたってきていた。幸い刺されてはいないが、ちょっと怖い思いもした。
下りで驚いたのは、沿道の声援がレースを終えての帰路でもあったこと。
下りはじめ、スタッフの方の姿に会釈をしながら下っていたが、しばらくすると上りの時に応援してくださっていた人々もまだたくさん残っておられ、声をかけてもらった。こちらも嬉しくなり、感謝を込めて「ありがとうございました」「お世話になりました」と声を出し始めた。すると、目に入る人すべてにお礼が言いたくなりはじめた。気が付いてみると、人が見えればとにかく大きな声でお礼を言いながら走る、というがとまらなくなっていた。それほど、スタッフの皆さん、そして沿道の応援には感謝の念が残っている。
そして、上りでの「いってらっしゃ~い!」、下りでの「おかえりなさ~い!」という声がなんだかとてもしっくりと、そして違和感なく受け止められた。
さて、閉会式会場へ到着して完走賞をもらい、自分のタイムを確認した。すると、自己計測のタイムと同タイム。もちろんコンマでの誤差はあるだろうが表示は秒まで。この事実はなぜかかなりうれしかった。そしてボードにて順位確認。カテゴリー内で30位台であった。全体の5分の1ちょいのところだろうか(カテゴリー内)。試走せずに走ったのがどの程度影響しているのかはわからないが、自分では満足できる成績だと思えた。とはいえ初参加のこのイベント。何をもって満足すればいいのか、ということはあるだろう。今回はやり切った感である。
この大会もあと2回で一区切りをつけることになるらしい。その中で、今回のタイムは次回に向けてのスタートとなるタイムだと思っている。体力的には少し残してしまった感もある今回。次回へのかだいとしておく。次回、そして最後となるかもしれないその次も出場し、現状のタイムより少しでも上を目指せるよう努力をしてみたいと思っている。